2013年11月
スタジオ・ジブリを描いたドキュメンタリー映画「夢と狂気の王国」。
傑作「エンディングノート」の砂田麻美さんが撮影、監督。
子どもの頃から身近にあったジブリ作品。
同じものづくりの大先輩として、尊敬する宮崎駿さんの制作の日々を写しとった映像に音楽をつける。
とても緊張しました。
少し進めては、砂田さんと何度も電話で話しあって、いや、彼女ももちろん悩んだと思いますが、僕も悩みました。
一見するとシンプルなドキュメンタリー作品なのですが、とても複雑なつくりになっていて、例えば、宮崎さんが真面目に、半ば恐ろしいことを話しているシーンに、まったく別の楽しげな映像が当たってきたりするのです。宮崎さんが喋る内容に音楽を当てると暗く真剣な感じになりますし、映像に音楽を当てるとがやがや楽しい感じになります。これは、難しかった。
何度も試していい結果になったと思いますが、なんだろう、この映画は確かにドキュメンタリーなんですが、砂田さんによる砂田さんの物語なんだと思います。そこが面白い。
そしてなんとなく、僕もそういう作り方をしているんだと思います。
旅先で撮影してきた映像を、いったん自分の物語に置き換えて、紡ぎ直していく。
巧みに編集された映像の隙間から彼女の物語が溢れてくる。その物語を読み解いて、共振するように音を奏でました。
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やりはじめ、なかなか方向性が定まりませんでしたが、「ああ、ジブリというのは学校みたいなところなんだな」と感じてから、順調に進むようになりました。制作の時期に縄文まつりで久しぶりに小学校を味わえたのも大きかったです。
「かがやき」の二枚目の10曲目からは「夢と狂気の王国」のサウンドトラックになっていますが、ピアノのシンプルな曲が多くなりました。宮崎さんに当てる音はピアノがしっくりきて、鈴木プロデューサーはギターだったり。飽きないように、一曲一曲、ピアノの録音方法を変えるなど、細かな工夫をしました。隣の家から練習曲が聞こえてくるような、音楽室で誰かが演奏しているような、そんな立ち位置がよかったんです。
どこから聴いてもらっても、もちろんいいのですが、25曲目あたりから最後まで聴くのも好きです。
「風花」や「父」「熱風」など、こういう曲も村に越してこなかったら別の形だったんだろうと思います。
この頃、家の改築がはじまったので大工さんが毎日来ていたり、村のおじしゃんたちが集まる炭焼き小屋にお邪魔して、師弟関係の話や男の友情の話を聞いていました。
共同体、信頼や、守りたいものや、繋ぎたい夢の話。
「紡ぎ風 - 序曲」など弦楽器のアレンジは「おおかみこどもの雨と雪」と同じく足本憲治さんにお願いしました。
名コンビだと思ってます。
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