Homicevalo
ホミチェヴァロ

監督 : 高木 正勝

出演 :
ベイヤード(堀井厩舎)
大淵靖子 (多摩美術大学芸術人類学研究所)

企画 :
中沢新一
多摩美術大学芸術人類学研究所,
エピファニーワークス

参照 : 馬娘婚姻神話

スタッフ :
ベイヤード・カンパニー
大淵靖子(多摩美術大学芸術人類学研究所)
石倉敏明(多摩美術大学芸術人類学研究所)
金子雅是(多摩美術大学芸術人類学研究所)
林口砂里(エピファニーワークス)
津村多恵, 遠藤知美 

協力 :
堀井武俊(堀井厩舎)
堀井博之(堀井厩舎)

助成 : 財団法人 セゾン文化財団

12分/ NTSC / 4:3

2008年



Homicevalo(ホミチェヴァロ) は高木正勝さんと芸術人類学研究所による、初のコラボレーション映像作品です。中沢新一所長のもと、芸術人類学研究所では「人間と動物」の関係を根本から見直す研究プロジェクトを進めています。人間と動物が自由に言葉を交わし、結婚したといわれている神話の時代。とてつもなく古い時代から、世界中の神話が語っている「人間と動物の対称的関係」を、じっさいの映像をつかって表現するとなにがあらわれるでしょうか。また、このモチーフを現代に敢えて取りあげ、あらたな神話表現として蘇らせることは、果たして可能でしょうか。
この挑戦に応えるために、26 歳になる白馬ベイヤードと、フランスの曲馬サーカス「ジンガロ」への出演経験もある騎手の大淵靖子さんによるパフォーマンスの舞台が、2007 年夏の北海道・足寄湖畔に用意されました。これまで音と映像によって常にあたらしい表現領域を切り拓いてきた高木正勝さんは、ここで人馬一体となったパフォーマンスを撮影し、さらには馬(ベイヤード)と人間(大淵さん)との親密なコミュニケーションを表現するという、かつてない挑戦に
取り組むこととなりました。

高木さんはこの作品で、馬と娘の悲劇的な恋愛を物語る「馬娘婚姻譚」の神話(日本では『オシラサマ伝承』として知られています)を参照しながら、馬と人間の関係についての新しい神話を表現しようとしています。実際に撮影された映像は、高木さん自身の原画によるアニメーションと合成され、結果としてほぼ無声映像による、類例のない作品が完成しました。人間と馬、雄(男)と雌(女)、生と死、心と体、観る者と観られる者という対立関係は、流動する表現空間の中で互いに解け合い、固有の境界を失っていきます。

それが人間(ラテン語で "Homi")と馬(エスペラント語で "cevalo")との結婚=融合をあらわす、Homicevalo という作品タイトルの由来となっています。 旧石器時代から人間の速さへのあこがれの対象として、また生活上の善きパートナーとして、馬は数万年ものあいだ私たちの傍に生き続けてきました。馬はまた、シャーマンが天空や水界を旅する際のパートナーであるとも考えられてきました。Homicevalo は、歴史を越えてうけつがれてきた馬と人間との愛の関係を、約12 分間の詩的な映像モチーフのつらなりによって表現しています。観る人の心を引き込み、それぞれの心の中に新たな神話を生み出すかのような稀有な映像を、ぜひ体験してみてください。


石倉敏明( 多摩美術大学 芸術人類学研究所)