Private/Public
Takagi Masakatsu

2013.7.24 / Felicity





Dates:
27th Oct. 2006 (Fri) 19:30-
28th Oct. 2006 (Sat) 16:00-, 20:00-
29th Oct. 2006 (Sun) 16:00-

Venue:
Laforet Museum, Harajuku

 

Musicians:
Masakatsu Takagi (piano, visual, etc.)
Haruka Taguchi (vocal)
Miho Ota (vocal)
Jadranka Stojakovic (vocal, saz, guitar)
OLAibi (percussion)
Ren Takada (pedal steel, guitar)
Mikiko Ise (violin.1)
Miho Shimokawa (violin.2)
Shoko Miki(viola)
Kana Moriya(violoncello)
Nobuyuki Nakajima (strings arrangement)

Special Guest:
UA(vocal) (27th, 28th 20:00)




Staff:
Organized by Laforet HARAJUKU
Produced by LAPNET
Coordinated by Yasuo Ozawa(Precog) + Sari Hayashiguchi(Epiphany Works)
Supported by KAWAI MUSICAL INST.MFG.CO.,LTD., BOOK INC., Taguchi Inc.
Cooperated by Edith Grove Inc., Japan peroni Kenso Inc. KORG Inc. mina perhonen

Technical manager: So Ozaki
Chief engineer: Kazuyuki Matsumura a.k.a. Zak
Sound engineer: Hajime Ono(Acoustic)Takeshi Inarimori (Taguchi)
Monitor engineer: Yasuaki Satake, Kikuo Tanaka(Acoustic)
Lighting designer: Masakazu Ito (RYU)
Lighting engineer: Hisao Horiguchi (Kraft)
Stage construction: Makoto Takao/ Toru Itakura (kugayama Kobo)
Visual engineer: Kenji Hayashi/Katsunori Nagai/Yoshihiro Yoshida (Edith Grove)
Instrument tech: Kiyoharu Terada, Takuya Kumagai
Venue: Hironori Shinozaki/Sanae Kimura(LAPNET)
Public relations: Eiji Sugiura (LAPNET)

Special Thanks:
Tatsuya Ochiai (KAWAI MUSICAL INST.MFG.), Masaomi Yamamoto (BOOK), Masahiro Shida (BOOK), Yuichi Nakahara(KORG), Manabu Yokota(KORG), Kei Kobayashi (Edith Grove), Akira Minagawa (mina° perhonen), Aoi Nagae (mina° perhonen), Reiko Kurosawa (ONPA), Mikie Oishi (Third Stone From the Sun), Taishi Korezawa
(TONE)






参加ミュージシャン:

高木正勝 (ピアノ、映像、他)  

田口晴香 (ヴォーカル)
太田美帆 (ヴォーカル)
UA (ヴォーカル)
ヤドランカ (ヴォーカル、サズ)

OLAibi (パーカッション)
高田漣 (ペダルスチール、ギター)

伊勢三木子 (第1ヴァイオリン)
下川美帆 (第2ヴァイオリン)
三木章子 (ヴィオラ)
森谷佳奈 (チェロ)

中島ノブユキ (ストリングス・アレンジメント)






























<CD>

01: Ceremony
02: Bloomy Girls
03: WAVE
04: Mio Pianto
05: Exit/Delete
06: Any
07: Entrance
08: Watch the World



09: girls
10: Elegance of Wild Nature
11: Grace
12: Primo
13: Wald
14: Spiral
15: Rama
16: Light Song

+

Piano Score: 'girls'









Private/Public
Takagi Masakatsu

2013.7.24 / Felicity







2006年のコンサートを収録した初のライブアルバム。待望の再発決定!
girlsピアノ楽譜付き。




(以下、2007年初盤のリリースノート)

UA、高田漣、OLAibi、ヤドランカ... 10名のミュージシャンと創りあげた
優雅でかつ迫力のあるコンサートの音源を高木自身がミックス。

音楽家であると同時に映像作家でもある高木正勝。新世代を代表するアーティストとして常に新たな地平を切り拓いている彼の、東京では実に3年振りとなったコンサートを記録したライブアルバム。彼自身のピアノ演奏は もちろん、全ての楽曲を生演奏で再現した今回のコンサートは、高木にとっては大きなチャレンジであり、転換点となりました。

ステージ、映像演出、客席を含めた空間全体を使って表現したコンサートでは、作品が生まれる瞬間を演奏者と観客が共有しました。空間と人も含めたその場の空気感を再現することに重点を置き、その音源を高木自身がミックス。弦楽器による優雅な響き、野性的なパーカッションのリズム、自由で伸びやかなボーカル が見事に融合した、高木の音楽世界を体感できるライブアルバムです。

今回のアルバムには、過去の代表作や最新アルバム「Air's Note」からの楽曲に加え、コンサートで初めて発表された新作(5曲)、現在KUMON CMで使用されている「girls」、EPSON社 CMで使用されている「Grace」 を収録しています。また、特製のブックレットにはコンサートの写真や高木の映像作品のビジュアル、さらには、要望の多かった「girls」の楽譜を掲載。高木の音楽作品10作目となる本作は、単なるライブアルバムとは一線を画す、現在までの集大成かつ今後がうかがえる貴重な作品となりました。































 









<Private/Public 楽曲解説>

7月24日発売予定のコンサートアルバム「Private/Public」(再発版)について、ゆらゆらと書いてみようかと思います。

「Private/Public」は、2006年10月27日から29日まで全4公演おこなったコンサートの模様を収録したアルバムです。
(収録したのは、最終日の演奏が殆どです)

コンサートをひとつの作品として挑んだのは、この「Private/Public」がはじめてでした。
ラフォーレ原宿でソロの舞台を4公演も行える。
心躍る、とても大きなチャンスでした。
せっかくなので、共演者やスタッフと一緒にいちから作り上げていくようなコンサートにしたいなと、そんな心持ちでした。

参加してくれたのは、アルバム「AIR'S NOTE」で唄ってくれた田口晴香さん(ヴォーカル)、女性合唱団CANTUSをプロデュースする太田美帆さん(ヴォーカル)、サラエボ出身のヤドランカさん(ヴォーカル、サズ)、OOIOOでも活躍するOLAibi(パーカッション)、高田蓮さん(ペダルスチール、ギター)、弦カルテットに伊勢三木子さん(第1ヴァイオリン)、下川美帆さん(第2ヴァイオリン)、幹章子さん(ヴィオラ)、森谷佳奈さん(チェロ)、スペシャルゲストとしてUAさん(ヴォーカル)
10名の演奏家。ストリングスアレンジに中島ノブユキさん、PAにZAKさん。他にも舞台や照明をはじめ、宣伝やチラシをはじめとするデザインなど、こんなに大勢の方達と一緒に何かに立ち向かうことも、はじめてでした。

もう7年も前のことなので記憶が曖昧ですが、当時を振り返りながら各曲について。



1. Ceremony


はじまりは、何か儀式のようなものにしたい、そう思ってました。
短い旋律をぼそぼそと口ずさみ、次の唄い手が同じ旋律をずらして輪唱していく。
「かえるのうた」と同じですね。
輪唱すると、はじまりも終わりも分からなくなってきて、どんどんと深い所に落ちていく気がしてきます。
舞台の導入部として、出演者の緊張感や心の置き所をきちんと自分の方に向けてもらう為にもいい始まり方だったのではと思います。

アルバム「AIR'S NOTE」の後に臨んだコンサートでしたが、何かアジア的なものに、日本的な何かに近づいていきたいなという想いがありました。
その想いは、2年後の「Tai Rei Tei Rio」というコンサートに繋がっていきます。

 






02.Bloomy Girls





一転して、ここからいきなりクライマックスに持っていきたい、そう思っていました。
映像作品に合わせて、10名総掛かりで演奏しました。

演奏する旋律は複雑ではないのですが、繰り返すまでの小節数がまちまちで、きちんと数えながら演奏する必要がありました。
他の演奏者は、僕ほどには苦労していなかったようですが…。

普通に考えると、8小節でひと固まりで繰り返す方が気楽なんですが、ときに9小節になったり、7小節になったり。

ためしに、ベースの音(チェロ、もしくはピアノの一番低い音)を聴きながら、数えてみて下さい。
繰り返しまでの長さが、伸びたり縮んだりしています。

元は映像を見ながら作った曲なので、ふにゃふにゃしているんですんね。
(映像の為に作った曲は、だいたいそうなります)
弦のアレンジをして下さった中島ノブユキさんが、それを面白く思って下さって、原曲に忠実な進行になってます。
原曲は、iTunesなどで配信しているので、聴き比べても面白いと思います。

ときどき飛び出してくる唄声が、タイトル通り花が咲き乱れて何かが昇華していく様をうまく醸し出してくれてます。

 












03. WAVE



2曲目に引き続き、ここまでをクライマックスと思ってやってもらいました。
クライマックスと言っているのは、舞台での気持ちの持っていき方というか、勢いのことです。
中盤以降にどどどっと勢いよくやってしまいたくなることを、敢えて冒頭に持ってきたいなと。
何故そう思ったんでしょうね…。
はじまりで盛り上げるだけ盛り上げておいて、後はゆったりじっくりやりたかったのかもしれません。

この曲も映像に合わせて作った曲です。
とても単純な作りの曲ですが、それ故に自由に演奏できる余裕があります。

高田蓮さんのペダルスチールは、ハワイアンのようにほわ〜んとゆったりした使われ方が多いですが、ここでは雷の如くディストーションのエフェクトを掛けてバリバリやってもらっています。

アイさん(OLAibi)のパーカッションと僕のピアノで土台を作って、あとは各々荒れ狂う波のように自在に演奏してます。
太田美帆さんのお経みたいな唸り声には吃驚しました。

 







04. Mio Pianto



この曲は「COIEDA」のすぐあと、2004年辺りに作った曲です。歌詞は当真伊都子さん。

昭和に生まれ育った僕には、なにか懐かしい曲です。
たまたま「暗い日曜日」という曲に出会って蓋が開いたのか、あっという間にうまれた曲です。

リハーサルではじめて弦楽器と一緒に演奏したとき、とてもスムーズにやりたいように音が広がって、ああこういうことなんだなあと感激しました。
(弦楽器と奏でること自体、はじめてでしたから)

中学高校とクラシックピアノを習ってなかったら、こういう曲は作れなかったと思います。

ドイツのKaraoke Kalkというレーベルから出た「Kalk Seeds」というコンピレーションアルバムに最初に録音したバージョンが収録されてます。

コンサートでは、この曲の前に「Birdland #3」というピアノ曲を演奏してました。

 







05. Exit/Delete

弾けないギターではじめて作った曲です。
(原曲は「COIEDA」に収録)

最初はもっとポップな曲だと思って作っていました。
夕暮れ海辺のイメージ。
歌詞はDavid Sylvianさん。
(原曲ではなんと歌ってもらえました)
が、当初のイメージとは真逆の歌詞で重い内容にとても驚きました。
(もう今では、すっかりそういう曲だと思っていますが)

コンサートではピアノで伴奏を。
ヤドランカさんの歌い方は振れ幅があるので、ずれてしまわないように丁寧に弾いたのを覚えています。
家でプライベイトに演奏している感じが出たのではと思います。

 









06. Any

この曲もギターで作った曲です。
ピアノで作るのとは、感覚がまったく違って面白いです。
(原曲は「AIR'S NOTE」に収録)

このコンサートはアルバム「AIR'S NOTE」をリリースした直後のタイミングだったので、アルバムに収録した曲をどう演奏するかが悩みというか、ひとつの挑戦どころでした。

何度かリハーサルを重ねて行くうちに、アイさんのパーカッションや蓮さん、ヤドランカさんのギターがうまく噛み合ってきて、予想以上に素晴らしい結果になったと思います。

この曲を作ったとき、裏山に毎日のように通っていました。
訪れる時間帯や天候によって、耳に入ってくる音が全く違って。
耳をすましていると、「ここからが山」という境界線があるように思えました。
ある地点から一歩足を踏み入れると、急に音の世界が変わります。

風の音、川のせせらぎ、鳥の鳴き声、虫たちのうた。

そんな音を一気に浴びてしまうと、無造作にでたらめに鳴っているようにも思えますが、ほんとうは、ひとつひとつ、それぞれの在り方に理があって、それぞれがお互いの音を聴いて、それぞれが唄いたいように唄っているのがわかってきます。
そういう風に音楽を編んでいくことが出来たらなあと。

この曲を聴くと、裏山を思い出します。

ここからしばらく「AIR'S NOTE」からの曲になります。

 














07. Entrance

原曲は、「気配」だけのようなものなので、どう表現したらいいものか、試行錯誤でした。

やまびこのように、奏でた音が遅れて返ってくるような。
山に向かって唄うと、山が唄い返してくれるような。

このアイデアは、のちに「Ageha」という曲で新しい実になっていきました。

 








08. Watch the World




これもギターで作った曲です。
思い返せば、この頃は「うたの曲をつくる=ギターを鳴らしてみる」でした。
歌の曲は、ピアノではなかなか作れなかったんですね。
ピアノで作ると、もっとこてこてしてしまうというか、自分が思う「抜け」が出ませんでした。
ここ数年は、殆どギターに触れなくなってしまいましたが、当時はギターを持つと曲が作れていました。

民謡のようにシンプルな旋律にのせて世界を物語りたかったのです。
制作に煮詰まるとき、スランプというか、そういうとき、この曲の歌詞が頭によぎってぞっとすることがあるのは何故だろう。

コンサートでは、この後に「Ophelia」を演奏してましたが未収録です。

* ほんの一瞬ですが、リハーサル時の「Ophelia」。













09. girls

「COIEDA」に収録しているのが、はじめて演奏したバージョンです。
あちらは2003年の10月に表参道のSpiralホールでコンサートをしたときのものです。

2003年の9月頃にDavid Sylvianさんのヨーロッパツアーに映像で参加したのですが、そのリハーサルやツアーの間に作曲しました。

Davidさんの住居とスタジオは山の中にひっそりとあって、そこでリハーサルを2週間ほど重ねました。
リハーサルと言っても、映像担当の僕は足りない映像をひたすら制作し続けるしかなく、Davidさんと弟のSteveさんが演奏の練習を重ねる傍ら、新たに撮影したりコンピュータでこつこつ素材を作っていました。
朝早く起きて昼間から夕方に掛けてリハーサルが行われましたが、日に日に彼らと生活時間がずれていき、僕は夜通し作業して、彼らの練習中は寝てました。

夜になると、コヨーテ?犬?やフクロウの鳴き声が真っ暗闇の山から聴こえてきて、ぽつりと独り、全身が凍る想いをしておりました。

この時、お腹が痛くなるくらい大きな懸念がひとつ。
Davidさんのツアーから帰国したら、すぐにSpiralホールでの自分のコンサートが待っていたのです。しかもはじめてのソロ舞台。
新しい曲を用意する必要がありました。
曲はいくつもあったのですが、「舞台で演奏したい」曲がなかったんですね。
なので、映像を作りながらも、「曲も作らねば」と悶々としてました。

ある晩、Davidさんのスタジオにあるエレピ(ピアノはなかった)を勝手に弾かしてもらってるうちに、いい響きが出てきました。
すぐに側にあったビデオカメラで記録しました。
いい曲が出てくる時は、あっという間です。
作曲するぞという気分でもなく、「あ、いまのいいかもしれない」という程度の感覚です。
なので、「まあこういうのは、また出てくるからいいか」と記録するのを諦めたりしがちですが、いやいやいや、ふっと湧いてくる瞬間こそ大事なものです。
(このとき録音したエレピの音は「COIEDA」のgirls冒頭に少し使ってます)

girlsは映像作品でもあります。
girlsの映像は、元々はDavidさんのツアー用につくった映像でした。
撮影はDavidさんの庭。(山です。とてつもなく広い)
ツアーの間、お子さんたちは海外旅行に行くというので見送りに外に出ました。
大人たちが別れを惜しんでいる間、子どもたちがわいわいはしゃぎ出したので、撮影をはじめました。
Girlsの映像では、楽しそうに見えるかもしれませんが、精一杯の強がりと言うか、あの映像の後、みんな泣いてました。
これ以上細かくは書きませんが、人生、いろいろあります。

以前にも少しだけ書きましたが、僕はあの映像を見ると色んなことを思います。

さて、いよいよヨーロッパツアーが始まって、一気に慌ただしくなりました。
長い距離を移動して、夜行われる舞台に備えます。
舞台が終わるとホテルに戻って休むのですが、僕はというと休む間もなく帰国後の自分の舞台に向けて準備に勤しんでました。
(そのとき作った映像が「Private Drawing」)

Girlsの映像を見ながら、曲はどうしたものか…。
Davidさんのスタジオで録音したエレピの演奏を聴いてみました。
もしかしたら…。
2倍速で鳴らしてみました。
魔法が掛かりました。
これだ!
映像と合わせてみると味わったこともない聴いたこともない何かが生まれていました。

こんな早い演奏ができるのかな。
帰国後、自分の舞台までに1週間しか時間がありませんでした。
殆どの時間は、「Private Drawing」の曲作りや「Primo」もこのとき初披露だったので曲を整えたり。
肝心の「girls」はというと、一度ぱっとピアノで弾いてみて、「なんとかなるかなあ」と、あとは本番でなんとかしようと。

舞台の上ではじめて即興演奏したものが「COIEDA」の「girls」です。

そこから3年。
色々なところで演奏しているうちに、なんとなく「girls」と言えばこんな曲かなというのが固まってきました。
最初のうちは、それこそ毎回まったく違う構成で演奏することもあったのですが、時間が経つに連れて
「Private/Pubic」で演奏したような形に収まっていきました。


CDにはピアノ譜もつけてみました。
耳で聴いて弾いて確かめながら丁寧に採譜したつもりですが、、、。さて。。。
僕が「girls」を演奏する時は、楽譜が頭にある訳ではありません。
おおまかな構成を把握しているくらいです。
あとは変わってしまおうが構わないどころか、新しいgirlsがぽんと出て来ないかなと思いながら弾いてます。
(演奏のルールみたいなものが分かってしまえば、自由に弾けるのがgirlsのいいところです)

この「Private/Public」のgirlsは、今でも再現できる気がしますが、初演の「COIEDA」のバージョンは、、、しっかり練習し直さないと弾けないです。
原石の強さと言うか、仕方ないですね。

 









10. Elegance of Wild Nature

気持ちとしては、この曲を演奏する為に!という勢いでコンサートに臨んでいました。

一曲目の「Ceremony」のところでも書きましたが、なんだか浮ついている自分の音楽をもうちょっとなんとかしたいなと強く思っていた時期でした。
(いま思い返すと、その浮つき具合こそが僕のいいところなんですけれど)

作曲の仕方も他と違って念密に進めました。
普段は、思い付くままピアノを演奏して流れのまま作曲しますが、
8小節単位くらいで敢えてストップしてみて、その中で世界をきちんと描いてみることに。
描けたなと思うと、次の8小節はまったく別のシーンとして新たに考えてみました。

シーンを明確に分けて、
演奏する楽器もリズム感もシーン毎に変えていきました。

この曲のように雰囲気が次々に変化していく曲に挑戦できたのは、とても大きな糧になりました。

例えば、「Tai Rei Tei Rio」や「Collen」といった曲、
最近では「うたがき」の映像につけた新曲だったり。

映画「おおかみこどもの雨と雪」の「少年と山」みたいな曲も、このチャレンジがなかったら思い付かなかったんじゃないかと思います。

僕にとっては記念碑的な曲です。

 














11. Grace




「Private/Public」の4公演のうち、2公演にゲストとしてUAさんが歌ってくれました。
他の2公演では田口晴香さんが歌ってました。
(晴香さんが歌ったデモテープがあって、それも素敵なんです)

UAさんとは、「Lightning」のミュージックビデオを制作させてもらった関係がありました。
が、まさか歌って頂けるとは思っていなかったので、慌てて歌詞を用意して曲を整えました。

この曲は、いつ思い付いたのだっけ。
和歌山に向かう高速道路だったか(いまでもその場所にいくと「ここだ」と思い出すのですが)、
風に乗っているような感覚になるところがあって、
そこでふっと曲の出始めのメロディーが湧いてきました。

なんだか草原にいるような曲だなあと思ってます。

「Ceremony」「Elegance of Wild Nature」、そして「Grace」が、
コンサートの為に新たに作った曲です。

この3曲だけ分けて聴いてみると、「Tai Rei Tei Rio」みたいなことを既にやりたかったのが、少し見えてくる気がします。


* 作曲時のデモが残っていたのでアップしました。


 





12. Primo

コンサートでは、この曲で本編終了でした。
(CDには収録しませんでしたが、他にもUAさんやヤドランカさんによる即興演奏の時間があったり、
「Birdland #3」「Ophelia」「18 portraits of Atlas」の演奏がありました。)

この曲も「girls」と同じく、2004年のSpiralホールでの初演の録音を「COIEDA」に収録しています。
基本的には、あの時の感じをベースにしました。

こうして曲毎に何かしら書いていると、大きく2つ、臨む姿勢があったのだなと気付きました。

ひとつは「既にリリースしている曲をどう生演奏で再現するか、どう+αの要素を組み込めるか」。

もうひとつは「コンサートの為にゼロから(何が起こるかわからないところから)皆で作り上げていく」。

次のコンサート「Tai Rei Tei Rio」は、既存曲はあれど完全に後者の姿勢のみで臨みました。
「Private/Public」は、2つの姿勢が行ったり来たりだったなと思います。

それで集大成っぽい雰囲気が出ているのかもしれません。

「primo」は当真伊都子さんが家に遊びに来てくれた際に、
「こんな感じの曲がやりたいんやけれど」と演奏しながら一緒に歌ったのがはじまりでした。
こういうとき、実は作曲した何かを用意している訳じゃないんです。
ぱっと思いつきで話して、奏でてみて、「あ、いいやん」と、その場で作曲が始まって終わります。

隣に誰かがいて、説明しながら演奏すると、とても気楽になります。
いまでもCM音楽など、制作途中に煮詰まると、妻に「ちょっと来てー」とお願いして
「これからやろうとしていること」を説明しながら演奏してみせます。
だいたい、このときに気楽に演奏したものが、そのまま使ってもらえる本番テイクになります。
不思議なもので、ぐっと思い詰めるより、
「ここがこうで、こうなってな」と人に話し掛けているような心持ちの時の方が、いい自分が出てきます。


 







13. Wald

この曲はリリースしていませんでしたが、「COIEDA」の後に出来ていました。
もう少し上海オーケストラみたいな雰囲気でしたが。

「COIEDA」の後、「AIR'S NOTE」をリリースしましたが、
あれはミニアルバムでリリースするという約束がはじめにあって、
実は入れられなかった曲がたくさんありました。

そういえば、「rehome」もほんとうは4曲くらいのシングルでリリースする予定だったのが、
あれよあれよと曲数が増えてしまってアルバムになっていたのでした。

作り始めると、たくさん出てくるんですね。
なんというか、ある世界観が頭の中に出来上がって、そこに住んでいる気分になっていきます。
そうなると、主になってくるような場面ばかりでなく、ちょっとした出来事、
朝はこんな感じだろうな、とか、雨が降るとこうなるな、とか。
色々と勝手に溢れてくるものです。

「Mio Pianto」も同じ時期につくった曲ですが、似てますね。
「COIEDA」の後は、ちょっと湿った感じの森にいるような作品に向ってました。

「AIR'S NOTE」が整ってくる頃には、随分と晴れ間が出てきて、
木漏れ日の中を歩いているような、季節も気分もそんな風になっていたので、
仕上げずにそのままに…。

そんな曲に、太田美帆さんが歌詞を付けてくれました。
美帆さんとは、ストリングスのアレンジを担当してくれた中島ノブユキさんとの打ち合わせでお会いして、
その場で歌ってもらったら、その表現力にびっくり。
そのまま参加して頂く形になりました。

こういう雰囲気の曲はあまりリリースしていませんが、実は得意なんですね。
得意というか、普通に出てきてしまうのを、
いまは別のことをしなければという感じで放っておいてます。

いつか最初に想定していたみたいに、アジアの人がヨーロッパの音楽を演奏する感じ、
エキゾチックな雰囲気で奏でられるタイミングが来たら、また続きをやってみたいです。

 




14.Spiral




この曲だけ、作曲は田口晴香さんで僕ではありません。
参ります。
とてもいい曲です。

「AIR'S NOTE」の制作時期に、同時に晴香さんのアルバムが作れないかなと、
「作曲してみたら?」と、録音機を渡しておきました。

数日後、やってきたのがこの曲です。
(おそらく、はじめてつくった曲だったのでは?)
伴奏もすべて声で奏でられていて、何から何まで素敵なデモテープでした。
その後、バタバタとしているうちにアルバムの話も一旦落ち着いてしまったのですが…。

実はこの曲、コンサートで演奏する予定はありませんでした。
3公演終わって、いよいよ最終日。
演奏者の皆もリラックスしてきて、いい雰囲気になっていました。
不意にヤドランカさんが「なにか別の曲を演奏しよう」と言い出して、
「晴香さんの作った曲がすごくよくて」と演奏してみると…、
「ああ、いい。これやろう」とヤドランカさん。

ほとんど練習することもなく、そのままアンコールで演奏しました。

途中で入ってくるアイさんのパーカッションとか、
ピアノの伴奏を切り替えたときにヴァイオリンの伊勢さんが反応してくれて曲調が変わっていく様とか、
美帆さんのコーラスの旋律とか、
生演奏ならではの面白みがどっと出てきた、いい演奏でした。

4つのコードの繰り返しで、ここまで豊かな膨らみを作れる曲もなかなかないんじゃないでしょうか。

いやあ、いい曲です。

 







15. Rama

これもいい演奏ですね。

原曲は、「world is so beautiful」「セイル」に入ってますが、
オール電子音の曲でした。
生演奏に置き換えて、改めてこんな曲だったんだと、興奮しました。

これは家で生演奏用のデモを作り込んで、ある程度それをなぞってもらいました。

このアレンジも「Tai Rei Tei Rio」で演奏してもおかしくない雰囲気になってますね。
西洋から少しずつ日本に近づいていってるイメージがありました。

産まれた時から身近にピアノや西洋の影響で彩られた音楽が溢れていて、
(西洋というか、アメリカの価値観や文化が溢れていて)
それはそれで慣れ親しんだものとして気持ちがいいのですが、
どこか身体がうずかないというか、もやもや晴れない感じをぬぐいたかった。

お祭りのときに否応なく身体や心が反応してしまう感覚だったり、
山や川で戯れているときに感じる土地の力だったり。
あんまり難しく考えなくていいのかもしれませんが、
一言でいうと血肉騒ぐ何かにずっと触れたいと思って音楽と接してきたところがあります。

「Tai Rei Tei Rio」でぐっとそういう想いに入っていきましたが、
これは子どもの頃からずっと抱えている想いなんですね。

とはいえ、明治辺りまで奏でられていた三味線のような音楽に親近感があるかと言われれば、
これはこれで、正直なところないんです。
外国の音楽を聴いているのと同じで、身近な感じはしない。

言葉にすると、やっぱり別にそんなこと気にしなくていいやんと思いますが、
いまも音楽をつくっていられる力の源付近に、こういう想いがもやもやっといつもあります。

これは戦うとか立ち向かうとか、そういう強い想いではなくて、
「こういう音楽があったらいいのに」と、探してもないから作らないと味わえないから作ってみたい。
そういう健やかな想いです。

これから色々と学んでいくうちに、また色んな発見があって、
いつの間にか「ああ、こういうことか」と何かと何かが繋がっていくんでしょうね。

さてさて、
「Private/Public」の音は、どこか全体的にキラキラ輝いている感じがあります。
それはPAとマスタリングを手掛けてくれたZAKさんの力です。
魔法を掛けられる人っているんです。

* 「Rama」のデモです。まずこういう形で演奏者に聴いてもらって、そこからリハーサルに臨みました。









16. Light Song

う〜ん。
記憶が曖昧ですが、4公演のうち、殆どは別の形で演奏していた気がします。

ストリングスの人たちが「自分たちだけ」で考えた「Light Song」を奏でて、
ヴォーカル担当の人が同じく「自分の感覚だけ」で考えた「Light Song」を唄って。

そんな風に出演者が順番に奏でて、音が混ざり合って終わっていく、そういう試みをしていた気がします。

アルバム「おむすひ」に収録しましたが、
世界各地で偶然出会った人たちに奏でてもらったのと同じやり方を、
舞台でやったらどうなるんだろうと。

が、ここは何故か、僕の唄とピアノメインになってますね。

「Light Song」については、以前「おむすひ」の解説の際に書いたので、
そちらを読んで頂ければと思います。

 




長くなりましたが、ひとまずおしまいです。

改めてアルバムを聴いてみると、いい作品ですね。
他人ごとのように書いてますが、時間が経つと、いい意味でそういう心持ちになります。
しばらく廃盤になってしまっていたので、今回の再発、嬉しい限りです。

さて、CDの内容はそのままですが、ジャケットが大きく変わりました。
前回のジャケット…、
あれは、初回限定のつもりで勢いよく進めたのですが、
初回分が売り切れた後も「いや、せっかく素敵なジャケットだからね、もったいないねえ」と、
売り上げを度外視して続けていたのでした。
当然のように、廃盤という形に辿り着いてしまったのですが…。
(あそこまで美しく製本されたCDもなかなか見当たらないと思います)

ですが、今回も前回と同じく近藤一弥さんにデザインを一任して、
いい感じに仕上がっております。
多少、画像が少なくなっていたり、
多少(じゃないかも)字が読みにくくなっているかもしれませんが、
極力、あったものが減らないように気をつけました。
girlsのピアノ譜も、もちろんそのまま残しました。
増やした要素もあります。

今回のものしか知らない場合、何も思われないかもしれませんが、
前回のものを知っていると、それはやっぱり何かしら感じるだろうなと思います。
僕が見ても、別物ですし、なにより別物にしないと出せませんでした。

そこは、新たに含ませた「あそび」の部分として、
ああ、なるほどこの部分はこうしたか、
などなど
あたたかく見守って頂ければと願っております。
(ギリギリまで頑張りました。もちろん)

既にあるものに手を加えるのは、やっぱり勇気が要りますね。

表紙の画像、お気づきの方もおられるかもしれませんが、
同じようで違います。
前回の画像は、映像からの静止画そのまま、「完成形」を使いました。
今回の画像は、「完成形」に行き着く一歩手前の画像を使いました。
整理されていない生まれたての感じが好きで、
いつか使いたいなと思ってました。

他にも廃盤になってしまったCDが幾つかあるので、少しずつ出せていけたらなと考えてます。