CMで使われたバージョンに音を足しました。
ピアノなどの鍵盤楽器で演奏すると、どうしても音の繋がりが分断されてしまいます。
ドの後にシを弾く。
ドからシの間には無数の音、音の高さがありますが、ピアノではそういう音は鳴らせません。
ここでは、特殊な楽器を使って、二胡やバイオリンを演奏するみたいに音と音を繋げて演奏しています。
角がない響きというか、音と音が繋がることによって、とてもまろやかな流れになりました。
アルバムタイトルの、「おむすひ」ですが、
「お」は尊敬語。「むす」は「産む」という意味の動詞、「ひ」は「魂」という意味です。
僕たちがいま使っている日本語の音は50音(ん?もっとか)。
言葉って、いまは文字があるので、文字のイメージで捉えてしまいますが、元々は音からはじまってます。
漢字には、音読みと訓読みがありますが、音読みというのは中国の漢時代に使われていた音。
訓読みが日本で古くから使われていた言葉の音です。
今回、アルバムに さとうみかをさんによる絵本がついているので、ぜひ手に取って楽しんでもらえればと思いますが、少しだけ。
例えば、「は」という音。
漢字にすると、、、葉、歯、刃、破、端。。。
たくさん出てきます。
漢字が指し示す意味は、もちろんそれぞれ個別のものです。
葉は植物に生える緑色の部分ですし、歯は口の中に生えているものです。
でも、昔の人は、葉と歯に同じ音を用いていた。
植物と人(動物)なのに。
「は」だけじゃなく、芽=目、花=鼻、実=耳、穂=頬。。。
面白いですね。
「葉と歯は同じもの」と思えないと、同じ音で表現しようと思わないと思います。
(中西進さんの本に詳しく書いてあるので、ぜひ読んでみて欲しいです)
話を「おむすひ」に戻して、「む」という日本語の音。
(これも中西さんの受け売りですが)
口を開けて「む」と言ってみて下さい。
言えないですよね。。
一度閉じた状態から、口をすぼめて作った空間から「む」という音が出てきます。
産むという行為に対して、「む」という音をあてた昔の人の感覚に驚かされます。
産まれてきた男の子だから「むすこ」、産まれてきた女の子だから「むすめ」。
「おむすひ」は、産まれてきた魂。
「むす」には「むすぶ」という意味もあるから、魂むすび。
ジャケットの絵にはそういう想いが込められています。
子どもの頃から、言葉に対する興味がありました。
「なんで、これを『て』っていうんだろう?」「だれが『て』って呼び出したんだろう?」
言葉にしても、色にしても、食べものにしても、音にしても。
いま身の回りに既にあるものって、誰かが何かのタイミングで作ったり、発見したものです。
ピアノを使って、音を出す。
ことばを、歌ってみる。
そのときに、やっぱり、この音、この響きを見つけた誰かの想いを知っておきたいと思います。
自分のいまの行為が、いつかの何処かで誰かと繋がっていると、きちんと思えるのって、とても大事なことだと思ってます。 |