おむすひ
高木 正勝

201.2.20 / Felicity

<Disc 1>

01. Light Song <Xela,2002>
02. Niyodo - piano
03. Kaze Kogi
04. Niyodo
05. Hasirimiz
06. Mikura
07. Odori
08. Garbha
09. Kaze Kogi - piano
10. Niyodo - piano (reprise)
11. Kaze Kogi - koti koti teiiyu
12. Odori - variation
13. Light Song <Nara,2002>
14. Nijiko
15. Nijiko - tiny piano
16. Nijiko - Origin
17. Light Song <Momostenango,2002>
18. Mahoroba
19. Ten Ten
20. Light Song <Antigua,2002>

<Disc 2>

01. Light Song <Atlanta,2001>
02. Tamame
03. Horo
04. NGIA
05. Colleen
06. ohoti
07. HEHE-MIHI
08. Sione
09. VEDA
10. Tamame (reprise)
11. Light Song <Köln,2001>
12. Sora
13. Yume
14. Furu-Fusa-Fusa
15. Yubi Piano
16. Light Song <Miyakojima,2002>
17. 一起走
18. Light Song <Istanbul,2001>
19. Kigi
20. Ticora
21. Musuhi
22. Light Song <La Habana,2001>
23. Light Song <first demo,1999>




・CD2枚組、全43曲収録(配信のみで発表された曲+未発表音源)
・32ページ絵本(さく・え さとうみかを)

映画「おおかみこどもの雨と雪」(細田守 監督)の音楽と主題歌、ONWARD '組曲' やHondaなど数多くのCM音楽を手掛けた高木正勝の3年ぶりのニューアルバム。

カンヌで受賞を果たし世界的な注目を集めた「Intel 'The Museum of Me'」のCM曲「Nijiko」 (2011)、NHKドキュメンタリー番組「仁淀川」のサウンドトラック「Niyodo 」(2011)、蒼井優主演映画「たまたま」のサウンドトラック「Tama Tama 」(2011)、Twitterでの呼びかけから集まった500名からの旋律を紡ぎ合わせた「Ten Ten」(2011)、TOYOTAなどCM曲を集めた「Yu So Ra Me 」(2012)など、配信限定で発表してきた楽曲群の初CD化。併せて、10年前のデビュー当時、世界中を旅し現地の人たちと共に演奏した「Light Song」シリーズや、未発売の各種CM・キャンペーン用のレアトラックも収録。全43曲、2枚組(約137分)の作品となります。

新旧、さまざまな土地の音源が織り重なり合いながら、人生初めてのデモテープ「Light Song <first demo,1999>」にさかのぼる、高木の10年以上に渡る音楽の「旅」をまとめた私家版のような構成。デビュー当時のように、再びうぶな感性に溢れた内容となっています。

ブックレットは新進の絵本作家 さとうみかを による描き下ろし新作(32P)。
装丁も絵本使用と手に取って嬉しい、アートピースとしての存在感にあふれた仕上がり。






 

インタビュー掲載

雑誌

  ・Sound & Recordings 4月号
  装苑 5月号
  Pen 4/15号


Web

  ・CINRA
  ・Felicity
  Timeout / Liquid room
  HITSPAPER
  ・Intoxicate
 

・Bounce
















 









Disc 1



1. Light Song <Xela,2002>


グアテマラの古都、シェラにあった楽器屋さんで録音。グアテマラで見た唯一のピアノでした。旅に出るとピアノを探してしまう癖があって見つけるとついつい弾かせてもらってます。このピアノは調律が狂ってましたが、なんだろう、ピアノの調律ってその場所に合うように狂っていく。だから何年も調律していないピアノって、その部屋ではとても気持ちよく響く。ピアノじゃなくて部屋自体が震えて鳴っているような、そんなあたたかい響き。

Light Songがたくさん入ってますが、すべてビデオカメラで撮影/録音しています。


 

02. Niyodo - piano

2曲目から12曲目までは、NHKドキュメンタリー番組「仁淀川」のサウンドトラックとして作ったものが並んでいます。

仁淀川は、四国に流れる透明に透き通った大きな川。NHKの齋藤勇城監督からはじめて話を伺ったとき、「山に落ちた雨粒がいつの間にか川になって、人とふれあい、最後には海に辿り着く、その大きな流れを番組で描きたい」と仰ってました。

このピアノと、3曲目、9曲目、10曲目は大阪のNHKスタジオで録音しました。ピアノの録音予定はなかったので何も準備してなかったのですが…。やっぱり演奏しているその場に誰が居るのかは大きくて、特に音楽プロデューサーの高石真美子さんが側でゆったり聴き入って下さったのが印象に残ってます。透明な演奏になりました。


 

03. Kaze Kogi



とにかくテーマ曲が必要だったのですが、それは次の「Niyodo」という曲のつもりで作ったのでした。でも僕の頭にはずっとこの「Kaze Kogi」が流れていて、番組では使われないかもしれないけれど、裏テーマ曲ということでお渡ししたところ、番組では見事なハマり具合。オープニングとエンディングを見事に飾ってました。結局、こちらがテーマ曲になったのかな。

歌は、合唱団ボイスフィールドから総勢26名、4名の子どもたち。
きちんと前もって練習してくれていて、とても助かりました。
今回は如何にも西洋風なコーラス隊という歌い方ではなく、「宴会でうたっているように」唄って欲しかったので、「にやにやしながらうたってください」「ゆらゆらと風や水の精がうたってる感じで」とリクエストを出しました。
子どもたちは、自信たっぷりに歌える箇所とそうでない箇所の差が激しくてどうしようか一瞬迷いましたが、そのままでいいやと。
大阪で録音をしたのもはじめてだったのですが、とにかく、がやがやわいわい楽しい録音でした。

下記のアドレスに歌詞や楽譜があるので、是非ご覧になって下さい。
http://www.takagimasakatsu.com/takagi-PDF/Niyodo-BOOK.pdf

リズムは川に舟を浮かべて皆で、ぎっこ、ぎっこ、よいしょ、よいしょ、してる感じ。
歌詞は作曲をしたときにピアノを弾きながら歌とともに自然に溢れてきた言葉をそのまま使いました。風が「ねえい~ねえい~」と吹くことだってあるのです。


 

04. Niyodo

若い4名による管楽器、多重録音です。近年、夏になると真っ裸になって川で泳ぐことが多くて、そのときの感覚がリズムに入ってます。流れに身を任した時の包まれるような気持ちよさと、同時に感じる怖さ、畏れ、力強さ。

たゆたうように身体を揺らして、2音を鳴らしてみる。それに山彦のように応える2音。小さな流れがどんどん重なって、川になって、広い海原に辿り着く。
雨も滴も、霧も湧き水も、濁流も清流も、滝も海も、どれも仁淀川。


 

05. Hasirimiz

山は笑い、水は走る。
ちょっと変わった調律で演奏しています。音楽って一番低い音、ベース音の流れで決まってしまうところがあります。感情が揺さぶられる原因は、主旋律ではなく、案外ベースラインだったりします。ここでは、バグパイプやインドの古典音楽ラーガのようにベース音はずっと変えずに持続させて、その景色の中で自在に旋律を動かしてます。ベースが動くと人の情感が動く、ベースが動かず旋律が舞い踊ると光景が動き出す。そんな気がします。





06. Mikura

魂の蔵、みくら。
浮かんだ時は倍くらい早い曲だったのですが、音数を抜いてシンプルに。川と共に暮す職人さんたちの静かな暮らしに寄り添えるように演奏しました。










07. Odori

川に集まった星のように明滅する蛍たち。
蛍が飛び交う時期になると居ても立ってもおられず、暗闇をかき分けてこっそり逢いにいくのですが、なんとも美しく、命を紡いでいく、その神秘が見える形になって現れた魔法のようで。
昔、「primo」という曲を弾いた時のようにエレピにディレイを重ねて演奏しました。。




08. Garbha

ハルモニウムというインドなどでよく演奏されている置き型アコーディオンみたいな楽器で演奏しました。この楽器には鍵盤を押さえなくても自動的にベースの持続音が鳴る仕組みがあって、その一音にあわせて音を奏でました。
サンスクリット語で母胎。宇宙の子ども。


 

 

09. Kaze Kogi - piano

はじめはゆったり弾いていたのですが、何かが弾けて楽しい演奏になりました。もう僕の癖になっていますが、次の旋律に向う際に一気に音を詰め込んでしまいます。そうすると、次から次に風が興って、心の中の何かが愉快になって笑い出す。
2枚目に入っている「Yubi Piano」という曲の大きなヒントになりました。






10. Niyodo - piano (reprise)

12曲目もそうですが、特に別バージョンを演奏しようと思った訳ではなく。。。曲って、いつか一度完成してしまうのですが、それまでは主旋律がどこなのか分かっていない時期が続くものです。なにもかも、ぐにゃぐにゃしている時期があって、演奏する度に違う旋律が出てきます。録音したものを何度も聴き直すことで「この曲の旋律はこうあるべき」って決まってきてしまう。それはそれである洗練には向うのだけど、なんだか勿体ないなと、いつも思います。ふにゃふにゃしている時期がいちばん愉しい。






11. Kaze Kogi - koti koti teiiyu

コーラスなどを歌ってもらう前のデモの状態です。なぜか、なぜだか、こういう景色が僕の中にずっとあります。子どもの頃から。
小学生の頃の夢は、「おじいちゃんになって、ぽつんとある小屋で目が覚めて、お日様がぽかぽかと、お茶でも飲みながら、ピアノを弾いている。道ゆく子ども達は口ずさみ、僕は村のピアノを弾いている」、そんな夢を描いていました。クラスの文集にあった「将来の夢」には、サッカー選手とかパン屋さんとか書いてましたが、心の中にはいつも素朴な景色がありました。ピアノも弾けなかったのに。




12. Odori - variation

こうして改めて2曲目からの流れを聴いてみると仁淀川の曲たちはとてもシンプルだなあと。そこにある自然に想いを馳せたとき、やっぱりささやかな音を出したくなります。山に向かって「やっほ~」、散策しながら口笛吹いて、風と水と戯れて。そこにあるのは、心の静けさだなと。




13. Light Song <Nara,2002>

ある日、携帯電話の留守番にこの録音が入ってました。
音の記録、声の記録って、生活していると滅多に残さないけれど、こういうのを聴くとやっぱり残しておいたらよかったと思います。




14. Nijiko

IntelのWebコマーシャル「The Museum of Me」にあてた音楽です。
現在もまだ稼働中みたいなので、Facebookのアカウントをお持ちの方は是非ご覧になって下さい。
カンヌでも賞をもらいましたが、素晴らしい企画でした。

http://www.intel.com/museumofme/r/index.htm

依頼があった当初、インドネシアの人たちがFacebookを急激に使い始めたという背景もあって、まずは彼らに向けて曲を作って欲しいと頼まれていました。
そこで、ガムラン音楽と同じように五音音階を使用して作曲することに。
選んだ5音は、G♭,B♭,B, D♭,F。
これらの音を鳴らしているだけで、浮遊感のある旋律が湧いてきます。

思い返せば、震災後はじめて作った曲です。作る直前に、糸井重里さんのほぼ日にて「MOTHER」というゲームの音楽にまつわるライブを鈴木慶一さんと坂本美雨さんと奏でたのが決定的に大きかった。
エイトメロディーズという名曲があるのですが、小学生のときに聴いてすぐに虜になってしまいました。耳コピをして弾けるようになった、はじめての曲です。
ゲームはドラクエのようなRPGなのですが、主人公が旅を続ける中で、一小節ずつこのエイトメロディーズの旋律を集めていくのです。しかも、何故集めているのか最後まで知らされない。何とも衝撃的なゲームでした。少し進んでは、新しいメロディーが手に入る。早くメロディーの続きが聴きたくて聴きたくて。僕が音楽に興味をもった最初の曲です。

このエイトメロディーズを作曲した鈴木慶一さんと共に演奏する機会をほぼ日で与えて下さったのですが、本番がはじまって、いったい何時間演奏したんだろう。たった一曲を飽きることなく、延々と演奏しました。(ニコニコ動画にアーカイヴがあるのかな?)

僕はもうすっかり初心にかえって、このNijikoに取り掛かりました。ひとつひとつの旋律を丁寧に、誰かの言葉として紡いでいく。たくさんの声が、旋律が合わさって一曲が浮かび上がる。
スタジオに歌い手たちを呼んでどんどん録音していきました。
途中でもっとたくさんの色んな声が入っていると素敵だなと思い付いて、Twitterで呼びかけてた声を集めました。iPhoneなどには録音機能がついていますが、それで声を録音してもらって送ってもらいました。300くらい送ってくれたのかな?とにかく、編集が大変でしたが、こんなに愉しい曲作りのやり方もあるのかと。
聞き取りにくいかもしれませんが、全ての音を使ったので、どこかに誰かの声が紛れ込んでいます。
こんなにガヤガヤしている曲ははじめてです。


 


15. Nijiko - tiny piano

これは歌を抜いたピアノのバージョン。
ガムラン音楽を細かく聴いていると、ヒントがたくさん。
ハイハットで裏拍のリズムを刻んだり、タムを使って旋律を閉めたり。バンドだったらドラムが担当しそうな部分を、彼らは鉄琴を使って表現しています。面白いですね。
それをさらにピアノに置き換えて演奏してみました。



16. Nijiko - Origin

インドネシアには3回行ったのかな。行く度に違う表情を味わっています。ここでは、それらの旅で録音してきた音をふんだんに使いました。
ワヤン・クリッという伝統的な影絵芝居があるのですが、影絵の後ろには数名のガムラン奏者がいて生で演奏してくれるんですね。その日は、お客が殆ど居なくて寂しい感じだったのですが、影絵の本番がはじまるまで、奏者たちがゆるやか~にガムランを鳴らしていました。CDなどで手に入るガムランの演奏は激しいものが多いのですが、そのとき聴いた演奏は、とても低い音で、なんともゆったりしていて。ぽ~ん、、、、ぽい~~ん、、。きっと、本来はこっちの感覚なんだろうなと。
そういうことを思い出しながら、曲を作ってみました。
タイトルにOriginと書いてあるので、インドネシアにこの曲のオリジナルがあるのかと捉えた方もおられるみたいですが、自分で作ったものです。
ロードムビーのようにどんどん流れていく景色を音で描きました。


17. Light Song <Momostenango,2002>

グアテマラのシェラから、少し足を運んだところにある小さな町、モモステナンゴ。市場が開かれているので遊びにいきました。
お父さん(歌とギター)、娘さん(歌とシェイカー)、息子さん(ウッドベース)が路上で演奏していたので、Light Songを演奏してくれるようにお願いしてみました。
最初は恥ずかしがって無理かなと思いましたが、楽しく演奏してくれました。
その土地土地で、曲の解釈が変わるのが面白い。
メロディーしか教えないので、それがどんなリズムの曲なのか、暗い曲なのか明るい曲なのか、彼らの判断で随分変わります。
メロディーに慣れてくると、自分たちが元々知っている曲、慣れ親しんでいるリズムにあわせてしまうので、その土地の歌みたいになってしまう。
「グアテマラっぽく演奏して下さい」とは頼んでいないのに、結果そうなってしまう。
それが、なんとも面白い。
その日、その場限りの巡り合わせ。



 

18. Mahoroba

Tai Rei Tei Rioのドキュメンタリー映画「或る音楽」を撮ってくれた友久陽志監督からの依頼で、HondaのCMの為に作った曲です。
絵コンテを見せてもらいながら、監督の想いを聞くのですが、このときは「最終的な仕上がりはともかく、どんな気分でこの企画に取り掛かりましたか?」と尋ねました。
すると、「海外に旅に出る。出発の空港で、飛行機を待っている。ドキドキする気持ちと同時に、とても澄んだ、日の出の時間のような気分。」
それを聞いて直ぐに曲ができました。
シンプルな歌とピアノですが、気持ちが小刻みに踊るような。
19歳のころにアメリカに家出したとき、サンフランシスコからロサンゼルスに向って海岸沿いを自転車で走った記憶が蘇ってきました。ドキドキ不安なんだけれど、まだ見ぬ何処かに向って突き進んでいる開放感。

「まほろば」は古語で「すばらしい場所」。

CMでは使われていなかった後半部分があったので、新たに録音して付け足したりしながら仕上げました。



19. Ten Ten

SamsungのGalaxyを使ったキャンペーンCM「space baloon project」の曲です。
「Nijiko」と同じくTwitterなどで声を集めて作りました。
今回は、声だけでなく、旋律をお願いしました。
こちらからリクエストしたのは、「5秒以内であること」(長くなると編集する僕も大変なのと、ワンフレーズなら気楽に作曲できるかもと思ったので)、
「あなたは星のように宇宙に漂っています。向こうに地球が見える。その地球に対して、あなただけの言葉(造語)で、あなただけの旋律でうたってください」とお願いしました。
素晴らしい旋律、うたの録音が500ほど集まりました。

最初は全てを繋げてひとつの大きなメロディーにしようと試みましたが、そうしてしまうにはあまりに勿体ないくらい素敵な旋律ばかりだったので、きちんと味わえるように少しずつ紡いでいく形を採りました。

それぞれ色んな音階で歌っていたので、まずは音階毎に声をグループ分け。
似たもの同士をまず見つける作業ですね。
そして、誰かの旋律に誰かの旋律をくっつけてみる。そこに僕がピアノを鳴らして。
普段ひとりでやっている作曲の方法とまったく同じです。
一音鳴らして、似た仲間を集めて、それを紡いでいく。

夜空を見上げると、星々が点々と瞬いてます。
どの星とどの星を結んでいくかで、いろんな星座ができていく。

ぽつん、ぽつん、と。
現れては消えていく。祈りのような曲だと思います。

また続きをやりたいなと、いつも思ってます。


 

 

20. Light Song <Antigua,2002>

一枚目の最後もグアテマラでの録音です。アンティグアという小さな町で、中心部に噴水があって、旅人の休憩地みたいになっていました。マリンバがあったので、その家の人と。バチがなかったのでデコピンみたいに指をはじいて爪で鳴らした記憶が。。。

音楽って、積み木みたいに築いていけるものでもあるけれど、時間の記録って捉えると、いっぱいやりようがあります。誰かの時間の記録もたくさん聞いてみたいな。


 

 

 

 

 


 


Disc 2


 

01. Light Song <Atlanta,2001>

アメリカはアトランタの空港で乗り換えの飛行機を待っていた時の録音。
空港の外に出てぶらぶらしていたのですが、黒人の若い女性が暇そうにしていたので声を掛けてみました。
話を聞いてみると、どうやら歌い手のようで、これはしめた!とLight Songを歌ってもらうようにお願いしました。聴いてもらったら分かりますが、面白いやり取りでした。




02. Tamame

ここから10曲目までは小松真弓監督、蒼井優さん主演の映画「たまたま」のサウンドトラックになります。
監督から脚本と撮影したものを頂いて、この曲がすぐにできました。
映像を見ながら思い付くままに演奏したものです。

昔から、作曲した瞬間、曲をうまれてくる瞬間の演奏が一番いいなと思っていました。
なので、ピアノやキーボードの周りには直ぐに録音できるようにマイクが立ててあります。
改めてこの曲を聴いてみると、繰り返し毎に違うフレーズを弾いていて、すごいなあと思います。
一度曲が出来上がってしまうと、こうはなかなか弾けません。

ぽつぽつと独り言を言うように、自分の過去を語るように演奏しました。
タイトルは、たま=魂の憑代(よりしろ)、め=女。



03. Horo

映画の流れに沿って作曲していったので、これはTamameの後にすぐ出来ました。
単純にTamameを歌ってみただけですが…。

手で演奏すると、自分の手が演奏できる旋律が出てきます。
歌うと、自分が歌える旋律が出てきます。

こう書くと、当たり前のことなんですが、やっぱり自分の身体から出てきたもので曲を作りたいのです。
頭で作ることも可能ですが、何か嫌になってしまいます。
身体を動かしてみて、溢れてくるものを信じています。

Horoは、放浪、かな。
ホロと呼んでますが。ほろほろ。
いつかホーメイができるようになったら、あの歌唱法で歌ってみたいものです。


 

 

04. NGIA

自分の声をいろんなやり方で録音したり加工したりしました。
鳴っている音は全て、もともとは歌声です。

NGIAはポリネシア語で、〜のように見える、、かな?
んぎゃあ、赤子。
石や星に秘められた力を意識して奏でました。






05. Colleen

配信のみで発表していたものを改めて収録した曲のうち、この曲だけ手直ししました。
後半、変化があると思います。

Colleenはアイルランド語で、娘さん。

なかなか曲が出てこなかったので、変拍子のリズムをまず作って、そこから取り掛かりました。
変拍子にすることで、面白いアイデアが生まれるものです。
映画の舞台がアイルランドだったので、ケルトの要素はどこかに入れたいなと思っていましたが、この曲で実現できてよかったです。

この曲のようにたくさんの展開があるときは、前から順番に作っていきます。
8小節くらいで敢えてストップして、短い範囲を集中して仕上げる。
仕上がったら、次の固まりへ、別の展開を考える。
映像を作る時と同じやり方。
はじまりから終わりまで一気に想像できている訳ではありません。
5曲くらい作るつもりで頭から少しずつ取り掛かってます。
他のアルバムだと「Elegance of Wild Nature」とか「Tai Rei Tei Rio」という曲と同じ作り方です。
逆に、「Tamame」や「Girls」のような曲は、演奏しながら思い付くままに展開させていきます。

「おおかみこどもの雨と雪」のサウンドトラックだと、「少年と山」は前者。「おかあさんの唄」や「きときと」は後者。

ううむ。僕にとっては、この違いはとても大きいです。





06. ohoti

ダンサーの森山開次さんが出演している不思議なシーンにあてた曲です。
なんでもないような曲に聴こえると思いますが、一番苦労した曲です。
場の空気感、それも「不思議な」空気感を音で現さないといけなかったのですが…。
監督の頭の中の世界。いや、そんな場所行ったこともないですから、実際に「そこに自分が居る、おるよ」と思い込めるまで潜っていくのが大変なんですね。

森山さんが舞う度に、色んな人の想いが流れ星のように集まってくるようなシーンだったので、「おほち」というタイトルです。
いやあ、なんとも不思議なシーンだったのです。


 

 

07. HEHE-MIHI

へび女のシーン(と書いても、映画を観ないとよく分からないと思いますが)。
全編を通して、音楽プロデューサーの山田勝也さん(愛印)と相談しながら作っていたのですが、ディジュリドゥの音でへび女を表現するというアイデアは山田さんによるものです。

意地悪そうな?、でも同時に、どろどろした心を解放させる呪文のような子どもの唄を入れたことでスイッチが入り、次の「Sione」がうまれました。

HEHE-MIHI。へへみひ。へみひ。へび。蛇。


 

08. Sione

この曲ができたときは嬉しかったです。
10年来に「Light Song」の続きがようやく出てきたと思いました(2枚目の最後に入っているLight Songの最初のデモを聴いてもらえると)。

とはいえ、この曲も「Horo」も、「Tamame」のバリエーションなんですけれどね…。
作っているときは、そうは思っていないもので、あたらしい曲として作っているんですね。
いま書きながら不思議なものだなあと思ってます。

映画音楽やCM音楽に関わらせて頂いてほんとうによかったと思います。
一人で作っていると、「Tamame」という曲で満足したんじゃないかと思います。
「Horo」や「Sione」という、自分にとっては別の曲がうまれてくるのは、映画音楽の醍醐味だと感じてます。

最近は、1曲出てきたら、そのときに出来るだけたくさん曲を作るようにしています。

楽譜はこちらです。

http://www.takagimasakatsu.com/takagi-PDF/TamaTama-BOOK.pdf


 

 

09. VEDA

エンディングのシーンに当てようと思って作った曲で映画では未使用の曲です。
他にも、もう一曲作ってありましたが、最終的には次の10曲目が使われました。

歌っているときって、自分じゃない誰かが入ってくるような感覚があります。
その人の代わりに歌っていると旋律が勝手に出てきます。

それにしても、アルバムを通して、たくさん歌っているなあ…。
以前だと考えられないことです。自分の声、嫌いでしたから。


 

 

10. Tamame (reprise)

「たまたま」の映画は、一人称の語りで進んでいくので、音楽もそのような作りになっています。
一枚目の「仁淀川」と比べると、そこが大きく違います。

この曲は、2曲目を改めて弾いたものです。
2曲目と比べると、旋律が安定しています。
普段から楽譜を書かないので、うろ覚えのまま演奏していますが、何度も弾いているうちに旋律が安定してしまうものです。
コンサートで改めて弾く場合は、はじめてその曲を弾く時のように弾かないと面白くない。
舞台の上で、「作曲している」心持ちで演奏できると自分が楽しくなって、演奏も数段よくなります。
やっぱり、新しく生み出してる瞬間が一番楽しい。
そういう意味では、この曲は、コンサートの演奏みたいなものだと思います。
改めて新しい心持ちで演奏しました。


 

11. Light Song <Köln,2001>

ケルンの友人の家で、3人で演奏しました。
エレピ(ローズかな?)と鍵盤ハーモニカ2台。
天井が高い部屋で、気持ちよく響いてました。
一緒に演奏してくれた二人ともいまでも素敵な曲を作り続けてます。大好きな音楽家たちです。


 

12. Sora

TOYOTAが毎年開催している「第5回 夢のクルマ アートコンテスト」のCM曲。
世界中の子どもたちが描く夢の車。
森本千絵さんから楽曲の依頼があって、映像のあり方含め、細かく打ち合わせしました。
この曲は、ハンガリーのKataちゃんが描いた魔法の車を見ながら作りました。
子どもの絵って、細かな部分まで目を凝らして見ていくと、たくさん発見があります。
自分が好きなもの、愛おしいと思っていること、こうなったらいいのになという夢。

トイピアノの音に導かれるようにメロディーがうまれました。
トイピアノって音は可愛いですが、演奏するのがとても難しい…。
曲の後半部分は、「そら」というタイトルに従って、空が移り変わっていくように色んな時間を描いてみました。


 

 

 

13. Yume

こちらも「第5回 夢のクルマ アートコンテスト」のCM曲。
タイのPipatくんの絵を見ていると歌が湧いてきました。
彼の夢でもあり、きっと多くの人がもっている希望でもあると思います。
歌っているうちに、星空をただ見上げているような、そんな気持ちに。


 


14. Furu-Fusa-Fusa

次の「Yubi Piano」を遊びで鼻歌で歌っていたら面白かったので、裏山にて録音。
「まつげにそよぐ風」って、、、うん。気持ちよさそう。
裏山で僕は育った。


 

 


15. Yubi Piano

「Always'64 三丁目の夕日」の企業タイアップCM曲を弾き直したものです。 
Youtubeにもあげましたが、最初はドとソだけで遊んでいたところから曲が仕上がっていきました。
世界各地に昔から残っている音楽を聴いていると、2、3音しか使っていないのに、驚くほど豊かな曲がたくさん見つかります。
日本語で喋っている声を音楽として聴いてみると、だいたい3音くらいを行き来しているなあと、前から面白く思ってました。
その感覚、とたとたと何かを喋っている感覚で演奏するとこんな曲ができました。
普段、家で演奏している僕は、こんな感じです。


 

 

16. Light Song <Miyakojima,2002>

沖縄は宮古島のとある場所で。
素敵なおばさまとおねいさまたちと。
他にも宿屋に三線を作っているおじさまがいらして演奏してもらったのもありましたが、今回はこの楽しい演奏を。
おばさまが演奏が終わってぽつりと言った「どこにもないような」という言葉が大好きです。
ただただ、その場に居合わせた人たちが一緒に奏でただけなのに、些細な日常の一瞬だったのに。
家に誰かが遊びに来ておしゃべりしただけなのに。春の風が吹いただけなのに。
改めてそんな時間が流れてみれば、「どこにもないような」、そんな時間だったんだなと。
大切にしたいです。


 

17. 一起走

台湾は台北でオーケストラと一緒に演奏をしたのですが、そのときスタッフとして働いていたイーシェンに歌ってもらいました。
オーケストラとの舞台が終わったあと、猫空というお茶の産地に一緒に出掛けて仲良くなりました。
小鳥のような女性です。
気楽に録音したピアノを送って、気楽に中国語で詞をつけて歌って欲しいをお願いしました。
「こんな感じでどうでしょう?」と送り返してくれたものが、なんとも初々しい録音だったので、そのまま収録しました。
一起走。一緒に歩む、という意味でしょうか。

中学生の頃だったかな、サントリーの烏龍茶のCMでピアノの伴奏に中国語のやさしい歌が流れるシリーズがありました。
「近未来」や「21世紀」というと、SF映画に出てくるような機械で溢れた世界観ばかりでしたが、
僕にとっての「未来」は、この「一起走」みたいなイメージでした。
練習曲みたいなピアノにアジアの言葉がシンプルに歌われる。
それだけで、清々しい見たこともないような(でも見たことがあるような)いつか来て欲しい未来が垣間見えたものです。
僕より若い世代の人たちは、どんな未来像を思い浮かべているんだろう。


 

18. Light Song <Istanbul,2001>

イスタンブールの夜を徘徊していたとき、路地裏で見かけた女の子に歌ってもらったもの。
サズというギターのような楽器を抱えながら路上で歌っていました。
「Light Song」の旋律を口で伝えて、歌ってもらって。
ほんとうは、この歌の後、サズを弾きながら歌ってくれたバージョンがあったのですが、またいずれ。
短調の渋いアレンジになってました(笑)。
歌い終わった後、名前が知りたくて聞いてみたのですが、「My name is…」と言ったので、「ふむふむこの子の名前か」と思いきや。
「My name is…」と言いながら今度は自分を指して言ったので「あれ?」。
さらに「My name is…」と隣の子を指して。。。
んん。。。こういうところが、ほんとうに愛いなあ。
きらきらした宝石のような目が忘れられません。
声にも心がよく現れてます。

街中、ラマダン(断食)の時期だったので、厳粛な空気かと思いきや、ラマダンが終わった瞬間、どこもかしこもお祭り騒ぎ。
移動遊園地が花開き、子どもも大人も大変な賑わいでした。




19. Kigi

ここから3曲は、「第5回」に引き続き、「TOYOTA 第6回 夢のクルマ アートコンテスト」のCMのために作った曲。
この曲は使いませんでしたが、気に入っていたのでアルバムに収録しました。
今回のCMには、「子どもたちが未来の自分に向けて手紙を書く」というテーマがありました。
僕も手紙を書くように歌ってみました。
いまはもう製造中止になってしまったボイスチェンジャーで歌っているのですが、これで歌うと、特別な自分が出てきます。
他の誰かに歌をお願いするみたいに、「あ、この曲は彼に歌ってもらおう」といった風に。
自分の中のもう一人の大切な自分です。


 

20. Ticora

今回のアルバムを作るにあたって、一番楽しかったのが、曲をどう並べていくか。
どの曲の次にどの曲が来るかで、まったく違った世界が見えてくる。
いまや、iTunesなどで自分の好きなように曲順を並び替えられますが、
「おむすひ」はアルバムの流れで聴いてもらった方が面白いと思ってます。
特に「Light Song」を挟んだ箇所は、ぜひ、流れで聴いてもらいたいなと。

僕のお気に入りの流れは、11曲目辺りから最後まで。
特にこの「Ticora」に差し掛かったときに、「そうそう、この感覚!」と興奮を覚えます。
うまく言葉で言えませんが、自然の中に足を踏み入れたとき、音ってどこからかやってきて、どこかへ去っていく。
それぞれ勝手に動いているのに、全体としてまとまった動きがある、調和している。
どこをどう聴くかでストーリーは変わっていくし、見えるものも違ってくる。

子どもたちの声は、コンテストの授賞式の際に録音してもらったのを使わせて頂きました。
生まれた場所によって、ほんと、様々な歌い方、表現です。
「Kaze Kogi」や「Nijiko」や「Ten Ten」でやろうとしていたことを、ここでもっと素直にできた気がして、とても嬉しい曲です。

Ticora。チコラ。ちから。


 

21. Musuhi

CMで使われたバージョンに音を足しました。
ピアノなどの鍵盤楽器で演奏すると、どうしても音の繋がりが分断されてしまいます。
ドの後にシを弾く。
ドからシの間には無数の音、音の高さがありますが、ピアノではそういう音は鳴らせません。
ここでは、特殊な楽器を使って、二胡やバイオリンを演奏するみたいに音と音を繋げて演奏しています。
角がない響きというか、音と音が繋がることによって、とてもまろやかな流れになりました。

アルバムタイトルの、「おむすひ」ですが、
「お」は尊敬語。「むす」は「産む」という意味の動詞、「ひ」は「魂」という意味です。

僕たちがいま使っている日本語の音は50音(ん?もっとか)。
言葉って、いまは文字があるので、文字のイメージで捉えてしまいますが、元々は音からはじまってます。
漢字には、音読みと訓読みがありますが、音読みというのは中国の漢時代に使われていた音。
訓読みが日本で古くから使われていた言葉の音です。

今回、アルバムに さとうみかをさんによる絵本がついているので、ぜひ手に取って楽しんでもらえればと思いますが、少しだけ。
例えば、「は」という音。
漢字にすると、、、葉、歯、刃、破、端。。。
たくさん出てきます。
漢字が指し示す意味は、もちろんそれぞれ個別のものです。
葉は植物に生える緑色の部分ですし、歯は口の中に生えているものです。
でも、昔の人は、葉と歯に同じ音を用いていた。
植物と人(動物)なのに。
「は」だけじゃなく、芽=目、花=鼻、実=耳、穂=頬。。。
面白いですね。
「葉と歯は同じもの」と思えないと、同じ音で表現しようと思わないと思います。

(中西進さんの本に詳しく書いてあるので、ぜひ読んでみて欲しいです)

話を「おむすひ」に戻して、「む」という日本語の音。
(これも中西さんの受け売りですが)
口を開けて「む」と言ってみて下さい。
言えないですよね。。
一度閉じた状態から、口をすぼめて作った空間から「む」という音が出てきます。
産むという行為に対して、「む」という音をあてた昔の人の感覚に驚かされます。
産まれてきた男の子だから「むすこ」、産まれてきた女の子だから「むすめ」。

「おむすひ」は、産まれてきた魂。
「むす」には「むすぶ」という意味もあるから、魂むすび。
ジャケットの絵にはそういう想いが込められています。

子どもの頃から、言葉に対する興味がありました。
「なんで、これを『て』っていうんだろう?」「だれが『て』って呼び出したんだろう?」
言葉にしても、色にしても、食べものにしても、音にしても。
いま身の回りに既にあるものって、誰かが何かのタイミングで作ったり、発見したものです。
ピアノを使って、音を出す。
ことばを、歌ってみる。
そのときに、やっぱり、この音、この響きを見つけた誰かの想いを知っておきたいと思います。
自分のいまの行為が、いつかの何処かで誰かと繋がっていると、きちんと思えるのって、とても大事なことだと思ってます。



 

 

22. Light Song <La Habana,2001>

はじめて海外で録音した「Light Song」。
キューバのハバナにあるホテルのロビーにて。
「ブエナビスタ ソシアルクラブ」の映画を観た直後でした。
「あんな風にピアノが弾きたい!」。ピアノを習いにキューバに飛び立ちました。
何か当てがあった訳ではなく、偶然出会った人に教えてもらおうと。
ハバナについてびっくりしました。
どの町角でもミュージシャンが演奏している!

アメリカとの関係が悪かったこともあり、物質的には豊かではありませんでした。
店に入っても、がらんとしている。品物が殆どない。ガムは袋を開けて、一枚ずつ売られてました。
当然、ミュージシャンが演奏している楽器も値の張るものである訳がなく、カシオの数千円のキーボードでした。
ところがところが、とんでもない演奏をしてました。
近くで見ていても、僕には何がなんだか分かりませんでした。
日本ではおもちゃ屋さんのコーナーに置かれているあのキーボードから、なんでこんな音が飛び出しているんだろう。
夢中になって、色んな演奏家に声を掛けました。
「お前さんも弾いて」と、一緒に演奏したりもしました。一緒にたくさん踊りました。

そんなある日、とあるホテルの前を通りかかったところ(僕は、民家でホームステイしてました。最高でした)、
ほんもののピアノの音が聞こえてくる!
思わず中に飛び入ってしまいました。
ロビーでは、ふっくらしたおじさまがピアノを、その脇で黒い肌の素敵な女性がヴァイオリンを弾いている。
しばらく聞き惚れていました。
明くる日、再び同じホテルに向い、話し掛けてみることに。
「一緒に演奏しよう」と(思い返せば、どこでも「一緒に奏でよう!」ってなってました…)、
ブエナビスタで覚えた曲を弾いたり、アドリブで演奏したり。
4日程、このホテルに通ったと思います。時にはチップをお客さんが入れてくれたり。
いよいよ、明日帰る日になりました。
「なにか日本の曲はないの?」
う〜ん、困った。「さくらさくら」もろくに弾けないや。
「自分で作った曲でよければ。」
ゆっくりピアノで演奏してみました。するとヴァイオリン弾きの女性が、
「ちょっと待って。ねえ、あんたビデオで撮って」とピアニストに僕のカメラを渡しました。
演奏が始まりました。
なんだろう、なんだろう。
遠い地球の反対側に来て、見知らぬ者同士で、僕がはじめて作った曲を、一緒に奏でている。
わ、わ、わあ、すごい!すごい!

その録音がこれです。
家に帰ってから記録を見て、、、とても幸せでした。
旅に出たら、これから色んな人と演奏してみよう。

宝ものです。


 

 

23. Light Song <first demo,1999>

大学をやめて、友だちと3人暮しをしていました。
いまもミュージシャンとして活躍しているAOKI takamasaくんも一緒に暮らしてました。

バイトと制作に明け暮れる毎日。
当時の僕は、映像ばかり作っていました。
中学高校とピアノを習っていましたが、AOKIくんと出逢って
「ああ、音楽をやる人というのはこういう人なんだな」と。
それ以来、音楽は封印して、映像のことばかり考えるようになりました。

もうすぐ夏がやってくる。
10階建て(京都では最高峰クラスの建物の高さ)のマンションの最上階に僕らの部屋があった。
京都の街が一望できる、素晴らしい住処だった。

誰も居ない、昼下がり、これから進む道も、湧き起こる心も、何にもない時間。
部屋から出て、屋上に続く、外にむき出しになった階段でぼんやり昼寝をする。
光が、風が、気持ちいい。
太陽が、山にくっついて、空が、赤く染まっていく。
ああ、あの、西の、向こう見える山の向こう。
僕が育った土地がある。

不意に音を奏でたくなった。ピアノが弾きたくなった。
急いで部屋に戻った。
キーボードからはピアノの音。マイクを立ててみる。歌えそうな気がしたから。
声を出してみる。子どもの声??あれ?変な機械に繋がっている。
まあ、いいや。
MDにケーブルを繋げて。
手を鍵盤に。
心はあの山の向こうに。
深く息を吸って。
録音。

生まれてはじめて、音楽が僕の中から出てきた瞬間の録音です。
音が割れているけれど。。。
アルバムに収録するということで、割れた音が鳴らないように、綺麗に修正してみたのだけど。
なんだか、あの音の裂け目に、大切な想いが詰まっている気がして、そのままにしました。
音楽と出逢えてよかったです。